大腸がん関連医療事故(がんの発見の遅れ、大腸閉塞、縫合不全)

大腸がん関係のご相談が多いため、2019年2月の記事に加筆して掲載しています。2019年11月現在、大腸がん関連の訴訟を2件担当しており、最近、別の1件(縫合不全事案)を和解解決しました。他に、大腸内視鏡検査時の事故(大腸穿孔)事案もあり、過去に訴訟解決を経験しています。

大腸がんに関するご相談が多いのは、大腸がんの発症件数が非常に増加しているためと思われます。厚労省の統計(平成29年)では、日本人の死因1位はがん(悪性新生物)であり、その中の大腸がんの件数は、男性では3位(1位は肺がん、2位は胃がん)、女性では1位となっています。

大腸がんに関連する医療事故として多いのは、1:見落とし(発見の遅れ)、2:大腸閉塞の治療の遅れ、不備、3:大腸切除術の際の縫合不全(吻合不全)です。大腸がん手術後の縫合不全の頻度は、5%前後と、驚くべき多さです。私の最近の経験では、2と3が非常に多いです。他に、大腸内視鏡検査時の事故(大腸穿孔)事案もあり、過去に訴訟解決を経験しています。

1は勿論、いずれの事案でも、腹部画像所見の評価が不可欠であり、重要ポイントになる場合がしばしばあります。大腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸S上部、直腸)は、腹腔内の広い範囲をグルっと回って腹腔外に出ており、素人には画像の位置関係が理解し難いです。私は、大腸が問題になる事案では、再三、内科・外科、放射線科等の医師の先生方に画像の見方を質問し、お手を煩わせています。

2では、大腸閉塞の基本的な検査・治療(絶食、輸液、抗生剤、イレウス管又は大腸ステント)の遅れ、腸閉塞のうち、複雑性腸閉塞(腸管に血流障害があるもの=壊死・穿孔の危険がある)の緊急手術の遅れが主に問題になります。大腸閉塞(大腸イレウス)は、大腸がんによる大腸の閉塞、機能及び弾力性の低下、これらに由来する便秘・糞便の貯留によって生じます。大腸閉塞は、血流障害を生ずると急速に悪化し、大腸穿孔及び腹膜炎により、短時間で死亡に至りますし、血流障害が生じない事案でも、放置すると大腸内から腹腔内に漏出したバクテリアによる感染(バクテリアルトランスレーション)で死亡する場合がある致死的疾患です。医師の診察を受けたにもかかわらず、単なる便秘と片づけられる(誤診される)場合があり、便秘は要注意です。

3では、大腸切除術に伴う縫合不全の発生時期、縫合不全の原因として手技の誤りはないか、縫合不全の発見及び治療の遅れ、治療の不備、廃液ドレーンが適切に留置されていたか、因果関係(適切に対処できた場合の救命可能性)が主に問題になります。

1から3のいずれの事案でも、致死的疾患である大腸がんであるため、適切な治療をしていれば救命できたか、という因果関係に関して、大腸がんの進行度(Stage)が問題となります。

大腸がんは頻度の高い疾患ですが、医療事故の責任を問う場合、上記のように、要検討事項が多く、証明困難な場合も多いため、患者側は、相当な時間と労力を強いられます。 多くの被害者の方は、あれも悪い、これも悪いと、病院側の多数の落ち度を取り上げ、それだけ悪いのだから絶対責任を免れない、と考えます。しかし、殆どの場合、ご自分が思っている程、証明できているとは裁判所に評価されておらず、どれもこれも採用されず、不成功に終わります。肝心なのは、争点を絞り込み、シンプルな事実関係を、自分が十分と考えている以上に立証し切ることです。

しかし、殆どの場合、ご自分が思っている程、証明できているとは裁判所に評価されておらず、どれもこれも採用されず、不成功に終わります。肝心なのは、争点を絞り込み、シンプルな事実関係を、自分が十分と考えている以上に立証し切ることです。




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