アルカミド訴訟 非吸収性フィラーの危険性

裁判所に提出した書証からの論述です。

1 美容医療に用いる皮下への充填材料(フィラー)には、コラーゲン、ヒアルロン酸等の主として生物由来の吸収性のものと、パラフィン、シリコン等の主として化学合成による非吸収性のものがあるが、安全性の観点から、主として吸収性フィラーが使用され、国内では、遅くとも2011(平成23)年頃には、美容医療実務において、非吸収性フィラーの危険性が周知され、一部の医療機関を除き、顔面には使用されない実態にある。

2 日本では、非吸収性フィラーであるパラフィン、シリコン等が、1950年代からフィラーとして使用されたが、重篤な合併症が相次ぎ、顔面には使用されなくなった。

 アルカミドは、ポリアルキルイミドという高分子ポリマーを原料とする非吸収性フィラー、アクアミドは、ポリアクリルアミドという物質を原料とする非吸収性フィラーである。フィラーとしての性質及び副作用は類似しており、いずれも、遅くとも2000年代から国内でも使用されてきた。国内で使用されている非吸収性フィラーとしては、他にダーマライブがあり、同様の副作用がある。

3 アクアミドは、1990年代から海外で普及し、アルカミドは、2000年頃から使用されているが、いずれも、2000年代から、遅発性の異物肉芽腫及び感染症等の重篤な合併症の学術報告が相次ぎ、国内外でその危険性が知られるようになった。

 アクアミドの危険性に関する疫学調査の一例として、2008(平成20)年のイランでの報告では、542例を調査した結果、外科的処置を必要とした合併症の発症率は7.7%であったと報告されている。

アルカミドの危険性に関する学術報告としては、2008年5月、アルカミド注入から1年以内に副作用を発症した患者25人を調査した結果、10人に再発が認められた旨の報告が海外の著名な学術誌に掲載され、2012年9月には、使用患者267人中の19%に遅発性の感染症が見られ、発症時期は平均32か月後であった旨の疫学調査結果が報告されている。

4 国内でも、意見書作成者や、医学報告の筆者らが自らの経験として述べているように、2000年代から、他の美容クリニックでアクアミド、アルカミド、ダーマライブ等の非吸収性フィラーを顔面に注入した後に感染症、異物肉芽腫等の合併症が生じた患者が数多く外来を訪れるようになった。

 2015年の報告は、「当院の美容後遺症外来を受診する非吸収性フィラー注入後遺症患者は後を絶たず、中には、注入後数年~数十年して注入部の発赤、腫脹、硬結、疼痛などを訴えて来院する症例もある」と報告している。

2000年代半ばから2011年までの間に、国内の美容外科医又は皮膚科医が、非吸収性フィラーの合併症である遅発性の感染症・異物肉芽腫等の患者を治療した経験を述べた医学報告が相次いで医学誌に掲載されており、私が短期間で収集し得ただけでも、6件掲載されている。これらの報告の多くは、海外での報告と同様、合併症が多発していること、注入から数年以上後に発症する場合(遅発性)が少なくなく、非吸収性フィラーの摘出が困難であるため、治療が非常に困難であること、一旦治癒しても再発を繰り返すことを指摘している。

5 このように、合併症の報告が相次いだことから、遅くとも平成23年頃までには、非吸収性フィラーには感染症・肉芽腫等の合併症が相当な頻度で発症し、発症すると治療が困難であり、一旦治癒しても再発を繰り返す場合がありこと、注入の数年以上後に発症する(遅発性)ことが少なくなく、フィラーが体内に存在する間は発症リスクが継続することなど、重大なリスクがあることが美容医療の実務家に周知されるようになった。

 よって、非吸収性フィラーは、特に顔面には使用すべきでなく、患者の希望で使用する場合は、患者にリスクを十分に説明し、患者の十分な理解を得た上で使用すべきであると考えられるようになった。実際上、上記のようなリスクを承知の上で使用を希望する患者がいるはずはないので、近年では、非吸収性フィラーを顔面に使用する医療機関は、ごく一部に限られている。




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