医療事故で多く見られる病名・症状等のやさしい説明 2 消化器編

虫垂炎・・・大腸の一部である盲腸の末端にある虫垂が炎症を起こしている状態であり、行き止まりである虫垂の末端に糞便が詰まり、そこに細菌感染が生じることで起こる。軽症であれば抗生剤で治療するが、重症化すると虫垂切除術を要し、治療が遅れると、炎症が広がって腹膜炎となる。虫垂炎の症状は、腹部中央から右下腹部に移動する痛みと発熱であるが、非典型的な症例も多いため、医師が他の疾患と誤認し、発見が遅れて医療事故となる例が散見される。

腹膜炎・・・腹腔内で何らかの炎症が生じ、腹膜に炎症が広がっている状態であり、虫垂炎、急性膵炎等の腹腔内臓器の疾患、がんの腹膜への転移(がん性腹膜炎)等によって生じる。医療事故で多く遭遇するのは、虫垂炎、大腸・小腸等の外科手術時の消化管穿孔、縫合不全、大腸閉塞によって生じる腹膜炎である。急速に悪化し、敗血症、ショックに至る場合があり、腹膜炎の治療の遅れがしばしば問題となる。

縫合不全・・・外科手術時の縫合が十分に癒合せず、解離している状態を指し、各種手術で起こりうるが、医療事故で多く問題となるのは、消化器、特に大腸がん切除術に伴うものである。

大腸がん手術に伴う縫合不全・・・数%の高頻度で生じ、治療が遅れると、糞便等の腸内容物が漏出して感染を起こし、腹膜炎及び敗血症を発症し、致死的となるため、大腸がん患者の死因の大きな割合を占める。縫合不全の原因としては、手術時の縫合そのものが不完全である場合(手技の誤り)と、縫合は正常に行われたが、患者の基礎疾患等の要因で術後に縫合が解離する場合があり、後者のケースが多い。後者のケースでは、縫合不全の発見の遅れが問題となる。

消化管穿孔・・・消化管の炎症、外科手術時の侵襲等の原因で消化管に穴が開くことであり、各種臓器で生じるが、医療事故で多く見られるのは、虫垂炎による虫垂穿孔、大腸閉塞の進展で生じる大腸穿孔、医原性の子宮穿孔、子宮手術の際に近接する小腸や大腸を傷つけて生じる小腸や大腸の穿孔である。大腸がん切除術時の縫合不全は数%の高頻度で生じ、大腸がん患者の死因の大きな割合を占める。

腸閉塞・イレウス ・・・大腸閉塞と小腸閉塞がある。正確には、異物、腫瘍、炎症、術後の癒着等の器質的な要因で腸が閉塞され、腸内容物の移動が障害されている場合を腸閉塞(機械的イレウス)、術後の麻痺、薬剤の影響等により、腸管の蠕動運動が障害された状態をイレウス(機能的イレウス)という。従前、日本では、腸閉塞とイレウスは、同義に用いられていたが、近年は、海外に習い、上記のように区別するのが正しいとされている。腸閉塞の原因として多いのは、術後の癒着、がん、異物である。

大腸閉塞・・・大腸閉塞は、大腸がんに高頻度で合併し、糞便で生じる場合(糞便性大腸閉塞)もある。 腸閉塞により、腸管内圧が高まると、腸管に血流障害が生じ(複雑性腸閉塞)、腸管の壊死又は穿孔が起こり、致死的となる。腸閉塞は、軽症であればイレウス管による吸引等の保存的治療が可能であるが、重症化すると、開腹術を要する。複雑性腸閉塞が生ずると、急速に進展し、腸管の壊死・穿孔が起き、腹膜炎、敗血症へと進展し、死に至ることから、複雑性腸閉塞の疑いがある場合は、早急に緊急開腹術を行う必要がある。複雑性腸閉塞に至らない場合も、腸管内圧の高まりにより、腸管の細菌に対するバリア機能が低下し、腸管内細菌が血管内に漏出し、全身性の感染症(バクテリアルトランスレーション)を引き起こす場合があるので、腸閉塞と診断した場合、厳重な経過観察と速やかな治療開始が必要である。 腹痛及び嘔吐が主な症状であり、その症状が特異的でないこと、複雑性腸閉塞かどうかの判断が容易でない場合があることから、治療開始が遅れて医療事故となる例がしばしばある。




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