高齢者の脱水

高齢者の医療事故に脱水が関与している頻度は高く、脱水が単独で主な死因になっている事案は少ないですが、肺炎、敗血症、大腸閉塞、透析患者の死亡事故等、様々な事案で、脱水が併発し、又は死亡の背景にあります。以下は、脱水で患者が亡くなった事案の訴状に私が記載した内容を簡略化したもので、この事案は、当方の主張をほぼ全部認める内容で解決しています。

1 脱水の種類と病態

(1)脱水 

脱水とは、体内総水分量(水と電解質)が減少している状態であり、口喝、倦怠感、精神神経症状等の様々な症状が見られ、重度になると死亡する。 体内の水分の3分の2は細胞内に、3分の1は細胞外に存在し、細胞外液の3分の2は間質液(細胞と細胞の間にある水分)、3分の1は血液である。 細胞内外の水分量バランスは、Na等の電解質(水溶液中でイオンに解離して電気伝導性を持つ物質)である浸透圧物質によって決定され、主要な浸透圧物質は、細胞外ではNa、細胞内ではKである。浸透圧は、濃度の異なる溶液間で、濃度の低い側から高い側に溶媒(水)が移動する際、濃度の高い溶液にかかる圧力をいう。血液が高ナトリウムであれば、高浸透圧となり、細胞内から細胞外に水分が移動し、血液が低ナトリウムであれば、低浸透圧となり、水分が細胞外から細胞内に移動する。

(2)脱水の種類 脱水は、電解質と水のいずれの欠乏が多いかによって、水の欠乏の方が多い高張性脱水(水欠乏性脱水ともいう、高浸透圧)、電解質の欠乏の方が多い低張性脱水(Na欠乏性脱水ともいう、低浸透圧)、欠乏が同程度である等張性脱水に分類され、いずれであるかによって、原因や病状が異なる。  血液内の循環容量が減少していることを循環容量減少といい、いずれのタイプの脱水であっても、循環容量減少を来していることが多い。  高張性脱水は、血管内が高Na、高浸透圧となるため、上述のとおり、水分が細胞内から細胞外へ移動するため、口喝、口腔内の乾燥、意識障害等が生じる。高張性脱水は、発熱、熱中症、飲水障害等によって生ずる。高張性脱水は、高Naの状態であるから、高Na血症に特有の症状も見られる(後述)。高齢者は、一般に脱水になり易く、高張性脱水が多い。 低張性脱水では、水分が細胞外から細胞内に移動するため、口渇感は軽度であるが、悪心、頭痛等が見られ、血液量の減少により、循環不全を来しやすい。低張性脱水は、下痢、嘔吐、大量出血等によって生ずる。  

(3)脱水の重症度   脱水の重症度は、水分欠乏量によって評価され、水欠乏量が7%以上又は10%以上で重度であり、高張性脱水の場合、重度になると、意識障害、昏睡等の症状が生じ、死に至る。  脱水で死亡する機序は、循環容量減少により、血圧を維持できなくなること、循環容量減少による急性腎不全のため、多臓器が障害されること、高張性脱水の場合は、後述する高Na血症により、脳幹が障害されることなどであり、いずれも、著しい水分不足に由来する。 とりわけ、脱水による高Na血症は、自由に飲水できない環境にある患者、輸液不足の患者など、に、医原性で発症するケースが多いこと、高齢者における死亡率は40%にも及ぶことが指摘されている。

2 供給水分量と必要水分量

(1)水分量  体内に供給される水分量は、投与水分量と、体内で栄養素を代謝した時に産生される代謝水の合計である。  

(2)必要水分量 健康を維持するために必要な1日の水分量は、体重1kgあたり30~40ml又は35mlとされており、発熱や発汗がある場合がさらに必要である。  34kgとすると、必要水分量は34×35=1190mlとなる。

(3) 不感蒸泄量と最低尿必要量  体内の水分の主要な排出要因は、呼気や皮膚からの気体としての排泄(不感蒸泄)、尿による排出、便による排出であり、一般の成人の場合、不感蒸泄は、は800から900ml、最低必要尿量は400から500ml程度とされている。不感蒸泄と最低必要尿量の計算式は、次のとおりである。

不感蒸泄ml=15×体重kg+200×(体温-36.8℃)

最低必要尿量ml=10×体重kg




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